一茶庵手打ち蕎麦プロ教室修行日記…
蕎麦の世界の中興の祖、片倉康雄・一茶庵友蕎子が始め、現在その孫の片倉英統氏によって東神奈川で開校されている、一茶庵手打ち蕎麦教室・プロコース(20日間)の入学体験日記です。
■ 一茶庵修行ノート(調理編)
■ 横浜一茶庵流蕎麦打ち
第1日目
1日の授業が終わって家に帰ってくるまで、昼に食べた一茶庵そば教室の辛汁の甘さが口に残ってった。せいろの細さはアレで良いのだろうか。間違いなく僕の好みではない。
科学的で理由付けがされた授業というが、細部が今まで習っていた江戸手打ちそば教室とかなり違い、ある部分では、アレそこそんな手抜きをして良いの、と思えるところが何ヶ所かあった。何しろ、一度リセットして取り組んでみよう。
しかし、若い講師の話の底の浅さも一寸気になってしまう。
先ず第一日目の感想まで。
第2日目
昨日は本返しを作って、今日はもり汁を作ったら、昨日の口に残った甘さが消えた。
500gの蕎麦を3回打ったが、プロの修行といえ、打った蕎麦をその場で捨てるのには抵抗がある。2食分だけ持ち帰り夕食とした。
ここは一気加水の方法をとっている為、水回しから、くくりまでが切れ目のない一連の動作になる。またこね始めてから、艶が出るとすぐにまとめに入ってしまう。無駄と余分をなくした流れになっている。
丸出しも手のひらで麺棒を押し付けるように転がし、のすという目的に直線でぶつかっている。たぶんこれは1kg、1.5kgを打った時にこの方法の正当性を知らせてくれるだろう。
講師の言葉も1日目より、2日目と核心をついてきた。これからが楽しみになってきた。
第3日目
今日は美味しいかけ蕎麦が出来ました。
自画自賛ですが、本当に美味しいかけ蕎麦でした。
1番出汁と2番出汁を半分づつ、返しは出汁の1割です。しかも初日に作った返しと、普通のうす削りの鰹節を1分だけ沸騰の、極あっさり出汁です。鰹節は本と亀が半々です。亀節の血合い部分が出しのこくに効いているみたいです。キクー!!!
実は、今日の朝、電車の中で発見しました。左手の人差し指と、中指の第二関節の中ほどに、マメ・・・。???ナンデだか判りませんが、とりあえずつぶしておきました。最初の蕎麦打ちの時、手のひらが痛くて驚きました。独特の延し方法の為に、今まで使わなかった手のひらの真中が、延し棒にあたります。そうか、手のマメは丸出し、本延しの時のマメなんだ。気付いた時は3日目が終っていました。
第4日目
今日からせいろは1kgずつ打ちます。それに田舎です。
田舎好きの僕は期待しましたが、ザンネーン・・・。とても僕の店のメニューにはのりません。
今日は玄蕎麦からの製粉も講義の一部、機械練の使い方も然り、これも蕎麦屋修行の内と考え、腹も減り完食しました。明日は始めての更科を打ちます。
第5日目
今日は白雪、つまり更科を初めて打ちます。特に体全体を使う、肉体労働的蕎麦打ちでした。
![]()
見本打ちをする教官と、出来上がりの白雪と茶蕎麦。
更科粉は最初つなぎを入れずに、51%(1割増量の水を沸騰させる)の熱湯を一気加水。全体に水がまわった所で20%のつなぎを入れ、さらに水まわし。水まわしを完了させ、扇風機で完全に熱を取ってから、写真のような”ちぎり練り”。独立心の強い更科粉達を、お湯とつなぎの力を借りて、何とか連帯させます。すぐに分離独立しようとする輩が多いので、丁寧に扱います。しかも白雪は1mm延し、1mm包丁。
第1週が無事に終りました。蕎麦打ちも流儀により、さらに教官により微妙に違います。それぞれがそれぞれの理由による合理性を追求した結果といえます。特にここはプロ養成の講座ですから、無駄を省く合理性と、つきつめた論理性を追求するアカデミズムを感じます。素人を4週間でプロに仕立て上げるわけですから、教官も同じことを三度、少しずつ深みのある、核心に近づいた表現で繰り返し教えてくれます。
第6日目
第2週に入りました。講師の要求もも先週より少し高くなった様な気がします。
今日は先ず蕎麦打ち道具の講習。一茶庵のおすすめで一通り揃えると100万円を超えてしまいます。とりあえず21000円の延し棒だけは卒業までに買いましょう。
変り蕎麦の芥子切りとレモン切りです。芥子切りは初めて食べましたが柚と共に変り蕎麦の代表格になります。
第7日目
不名誉の負傷。
中指の先端が平と言うか、一寸えぐれている様に見えませんか。一茶庵の包丁は僕の指を痛めつけます。ほんの一寸の油断か、手順ミスが事故を誘発します。明日の木鉢が憂鬱になります。
今日の昼食。
僕は生まれてから56年この方、こんな贅沢なお蕎麦を食べてことがありません。
天せいろと天つきかけ蕎麦です。どーです、如何です、もう一度、どうです。今日は実習で2人前のお蕎麦が昼食になりました。当然木屑のベッドに入った車海老がメインです。少しお土産にして母親も相伴でいただきました。
しかし、実習生には不評の天ぷらでした。そりゃ、ぐずぐず揚げて、のんびり茹でりゃ、旨いわきゃありません。
とりあえず、時間の短縮、段取りと手際が僕たちの課題です。
第8日目
連日の豪華メニュー。しかも、少し研修生が手馴れた為に、カラットまでは行きませんが、もちっと揚がりました。
僕はかけ蕎麦が大好きになりました。
蕎麦を30分で打つことは、難しくまだ出来ません。
左のもり蕎麦は全然水を切っていませんが、これだけをつくっている間に、水が切れて、蕎麦がくっ付いてしまいます。蕎麦に対する感性は何処の蕎麦打ち教室でも教えないのかもしれません。
第9日目
今日のテーマは鴨。
最近のブランド、蔵王の鴨を6枚使った鴨せいろと鴨南蛮。2つを一緒に食べることなんかありませんが、鴨せいろの汁はもり汁とかけ汁の同割りなので、鴨南蛮の汁よりも濃く美味しく感じます。鴨肉の力のすごさを実感しました。
毎日美味しいものをいただいていますが、さすがに体がへばってきました。蕎麦打ちは体力勝負です。
第10日目
日曜日に植えた蕎麦の種が芽を吹きました。(今日は金曜日)
今日はとろろ蕎麦。つけとろと、山かけの昼食です。
実習は設備の整った中、プロ使用の高級な機材と食材を使って行なわれます。
5人の生徒もだんだん腕を上げ、講義内容もレベルが上がっていきます。
蕎麦も少しだけマシになって来たようです。今日で丁度折り返し、体はくたくたです。
第11日目
第3週目には入りました。かなり体はバテバテです。
今日の課題はうどん。先週の金曜日、第10日目に仕込んでおいたうどんを打ちました。
正直申し上げて満足の饂飩ではありません。せっかくなら快心の饂飩を打ちたく思います。
饂飩の原材料が安いと言え、饂飩打ちの労力は蕎麦の比ではありません。
夕方、蕎麦豆腐を仕込みました。明日からは蕎麦屋の経営と料理が課題の中心になります。
第12日目
初めての生粉打ちです。二八より4%加水を増やし、湯ごねです。
決して自分が求める蕎麦ではありませんが、その周りを模索する必要はありそうです。
蕎麦豆腐と蕎麦がきのバリエーション、定番の味噌焼と蕎麦のアペタイザー。
蕎麦三昧を完食の1日でした。
第13日目
なんだか疲れのピークが過ぎていったみたいです。
今日も生粉打ち。温度は昨日と同じ28度、湿度は2%低い46%、加水は同じく47%で湯ごねです。
少し昨日よりは水気が多く、柔らかめに練りあがりました。食べた結果も美味しくいただきました。
講義の内容も、昨日の経営コンサルタントの話に続き、校長の手打ち蕎麦屋開業のレクチャーと続きます。
調理はサイドメニューの間口を広げて、試食の繰り返し。ハードな日々で少しは痩せたかと思いましたが、これだけ毎日蕎麦を食べてやせるわきゃありません。
大変美味しい鴨焼と、蕎麦屋の定番メニュー卵焼きです。
幼稚園のお弁当でもあるまいに、砂糖を入れた卵焼きは如何なもんでしょう。
蕎麦屋から砂糖が消える日はあるのだろうか。
第14日目
今日は風呂釜屋さんの講義から始まりました。否、蕎麦釜屋さんでした。
茹でると言うことはβからαへの変換らしいけれど、化学はからっきしの僕には良く理解できません。
だけど、茹でる時はしっかりと茹でよと言う教訓だけは残りました。
それから、先週希望を出した1.5kgを初めて打ちました。
今は蕎麦を打つことが楽しくてしょうがありません。
しかし、1.5kgの蕎麦を今までと同じに打つことは出来ませんでした。
3枚たたみにして包丁を使いましたが、肉感と駒の進みが一寸違って太目のせいろの出来上がり。
蕎麦の味も一寸落ちたようです。
花巻、玉子とじ、湯葉とじ、そしておろし、すずしろ、ぶっかけと連続に試食。
デザートは蕎麦団子に蕎麦汁粉。
健康な人のみがこの講習の完食が可能です。体重は変わりません。
第15日目
午前中は蕎麦屋を多く手がけた建築家、遠藤晶の講義。
その後、僕は1.5kgのせいろを打ち、自分で茹で、生徒同士がそれぞれ試食。
驚くことに、3週間で見てくれはほとんど変りのない蕎麦を5人の受講生が打てるようになりました。
左から胡麻きりの白和え、蕎麦がき揚げ煮物椀、海老と鴨ネギの紅白椀。
蕎麦のバリエーション料理。俳味を理解しなければ決して美味しいものではありません。
3週間目が終了しました。あと1週間しかありません。
先ずは、ここで付いてしまった癖を落とし、自分の蕎麦と対峙して行きましょう。
第16日目
さて、第4週には入りました。最終週は実際の店舗を模したシュミレーションが行なわれます。そして料理はそば寿司。あまり食欲は湧きませんが、片倉康男が求めたそば料理の極めです。
今日はそば寿司の仕込み、せいろ1.5kg、かけ、せいろ、そば味噌のシュミレーションで終りました。
第17日目
今日はそば寿司。美味しいかって。うんにゃ。
稲荷寿司はまあまあ、海老は見栄えはします。かなり強めの味付けと、演出を工夫しなければそば職人の労力にあった商品にはなりません。
蕎麦屋のシュミレーションは明日から本番です。あと3日しかありません。
第18日目
本格的な実践シュミレーションが始まりました。研修生全員まごつきの連続です。
せいろ、かけ、天ぷらそば、つけとろ、鴨南蛮、酒に焼き味噌。そばは上がれどかけ汁を忘れ、再三焼き味噌でしくじり、20分かかってそばの4,5枚しか出せなくては、日に2万円の売上もおぼつかない模擬店の、さらにその予行演習です。
ご覧の通り、まごつきとほくそえむ校長、講師たちです。
ここに来る生徒たちの年齢、経歴は様々です。時間ばかり意識し、美味しくつくろうとする心がつい欠けがちになります。
第19日目
今日はそれぞれのチームが45分の持ち時間で蕎麦屋をプレオープン。せいろ、田舎、白雪、三色、天ぷら、鴨、とろろに甘味、お酒に焼き味噌とこれだけのメニューをすべて出し、10人分のそばを茹で、本日の売上1万円也。まごつきながらも釜前、中台、花番と3人の生徒が総がかり。楽しくシュミレーションが進められて行きますが、蕎麦屋の経営の難しさも教えられました。
中台が海老を油に入れると同時に、釜前はそばを湯ではじめます。
第20日目
最後の実店シュミレーションをやり、卒業式を迎えました。
一茶庵手打ちそば・うどん教室の修了証書を受ける。
校長と185期の修了生。左から、町田で料理教室を主宰する栄養学の先生・奥津さん、富山から来た小さながんばり屋さん・酒井さん、蕎麦屋の親爺を目指すぬまさん、手打ちそば中興の祖・片倉康雄のお孫さん・片倉英統(ひでのり)校長、大阪河内長野・そば切り「芦生」の中本さん、競艇界の大魔神ことサウナ好きの安岐さん。
5日×4週間のプロコース全員無事に、かなりの腕を上げて終了しました。
今後、授業のノートをまとめ備忘録としてUpしていきます。
皆さん、ありがとうございました。特に専任講師の竹本さん、お世話になりました。
同期の皆さんのご多幸と、一茶庵そば・うどん教室の益々のご発展祈りあげます。
制作 2005.8.1〜8.26